太郎です。岡山でオリジナルのGジャンを縫ってます。
映画「ハウス・オブ・グッチ」を観ました。ネタバレありの感想です。
私は現在服作りをしているのですが服好きというほどのことはなく、過去に遡ってもファッション誌を読み漁ったりセレクトショップに通うような青春時代を過ごしてきませんでした。そしてお恥ずかしい話、今でも知ってるファッションブランドは数少なく…。そんな私でもさすがにグッチは知ってますよ。お高いんでしょ。ハイヒールモモコさんが好きなブランドでしょ。ってそれはシャネルなのか…。その程度の知識です。ということで勉強も兼ねて観てきました。
マトリックス4は客席ガラガラでしたが、ハウスオブグッチはそれなりに埋まってました。もちろん時間帯や劇場の場所によっても違うんでしょうが。外国人夫婦がいたり、女性2人組だったり、年配の男性だったり…。ほんと客層が見えない。それはつまりそれだけ一般層に興味を持たせる映画だということでしょう。グッチというアパレル関係者じゃなくても誰でも知ってるブランド&レディーガガが出てる、というキャッチーさが魅力の映画です。
ちなみに超絶どうでもいいのですが「ハウス・オヴ・グッチ」じゃなくて「ハウス・オブ・グッチ」なのもグッチ、いやグッドです。気取ってなくてドストレートなタイトル好きです。
ストーリーは…もうタイトルそのまんまです。イタリアの高級ブランドGUCCIを作ったグッチ家にまつわるお話です。グッチ家のドロドロ劇を描いてます。ていうかGUCCIって人名から来てたのね…。それすらも知らなかったです。
内容的にちょっと過激なのでPG-12指定です。PG-12ということは知っていたので、どのシーンかなぁと思いながら見てました。「あぁ…でしょうね」というシーンがありました。激しめのベッドシーン。
ちなみにPG-12の意味は「12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要です。」とのこと。
いやあれどうやって助言するの。
面白かったですよ。私、映画の面白さを測る時に参考にしてるのが「眠くなるかならないか」で。3時間近い映画にも関わらず全然眠くなりませんでした。テンポも良いので早送りしたいなーとかそういう気持ちも起きず。どこが面白かったかと言うと…
面白かったこと①レディーガガが凄い
主演のパトリツィア役を務めるのが、かの有名なレディーガガ。レディーガガの映画へのハマリっぷりが凄い。ヒステリックで派手で強欲。実際の本人はそんなことないのかもしれませんが世間的なイメージはまさにでしょう。で、演技も上手。泣くは喚くは睨むは身体張るわ…。役柄を地でいってるんじゃないかと。イタリア人役というのも含めて もはや彼女以外いないでしょう。なんか最近歌の話題ないなーと思ってたら俳優業に力注いでたのね…。
三白眼の眼力の強さがもうスクリーン映えするする。絶対目そらさないでしょあの人。蛇に睨まれたカエルならぬレディーガガに睨まれた観客。本能的に観ちゃう。
途中パパラッチに囲まれるシーンがあるんですけど、完全リアリティーショーの説得力で。もはや演技論とか技術云々で追いつけない圧倒的人間力。
本気でオスカー獲れるんじゃないの。
面白かったこと②アダムドライバーが面白い
アダムドライバーというのは主演を務めたグッチ家の御曹司マウリツィオ・グッチ役の男優さん。私は初めて見た方なんですけど、なんかいい感じの顔。どこがいい感じかと言うと髪型や眼鏡のせいか現代的なハンサムじゃなくて昔のタイプのハンサムの仕上がり。最近ではまずお目にかからないダサめ古いタイプの眼鏡をかけてて。パーティーグッズの変装用のメガネってあるじゃないですか。あれ。目も含めてあれ。本人の素材としてのカッコ良さのおかげでギリギリ二枚目をキープしてる感じ。これが見慣れてくると普通にカッコ良く見えるから不思議ですが…。
ラスト付近で自転車に乗るシーンがあるんですけどまぁ姿勢の良いこと。ピーン。
どうでもいいんですけどマリツィオという役名がマリトッツオで脳内再生されてしまいます。マリトッツオって最初言いにくいなぁと思ってたけどマリツィオの方が言いにくい。マリチョだったらなぁもう少し言いやすいのに。
面白かったこと③だんだん性格が変わっていくマリツィオ
グッチ一族のマリツィオはいかにも育ちの良い御曹司。対してレディーガガ演じるパトリツィアはトラック運送を家業とする家に生まれた娘。クラブに通うタイプの奔放な遊び人。彼女の猛プッシュで2人は結婚するのですが。
最初は弁護士になる勉強をしていたマリツィオ。決して派手さはなく、育ちが良くてどちらかと言うと物静かで大人しいタイプだったのに、野心的なパトリツィアと結婚するようになってから衝突が増えて段々とエゴが漏れ出てくるんです…。最初はマリツィオに共感してたけど、後半は少しパトリツィアに同情的に感情移入。でも殺しちゃダメよ…。
この映画、既婚者はパートナーと仲が良いうちに観ておくといいのかも。
あとちょっと気になったシーンがあって。GUCCIのニューヨーク店でパトリツィアが試着した服を、マリツィオが「セールだから安く買えるよ」みたいなことを言ったらパトリツィアが「セールだなんて」と言うシーン。マリツィオにとってみればセール品を買うことは特段恥ずかしいことだとは思っていないのに対してパトリツィアにとっては恥ずかしいことで。金銭感覚の違いって羞恥心感覚の違いにも結び付いてるということでしょう。
面白かったこと④スーツカッコイイ&旧車がいっぱい
イタリアが舞台でしかもグッチということで衣装が美しいスーツが美しい。登場人物でオーバーサイズの服着てた人、一人もいなかったと思う。デニムも少なかった。覚えてるのはパパッラッチのカメラマンがGジャン着てたくらい。
あと古い高級車が数多く出てきて。私、車に詳しいわけじゃないから分からないんですけど さぞお高いんでしょうね。
日本語が途中出てきます。あのアルパチーノが日本語喋ってる…!そしてGUCCIのニューヨーク店のシーンでは日本人の団体客が登場。この役者さんたちホントに日本人かしら?!とアラを探そうとしてしまうのが私の悪い癖。日本人っぽかったけど確信持てず。
バブルでブイブイ言わしていた時の日本でしょうね。今こうやってハリウッド映画で描かれるのは正直言うとちょっと誇らしいです。自分はバブル時代を謳歌してませんが、そういう勢いのある一時代があった国に生まれたというのはやっぱり誇らしく感じます。
今後日本はどうなるんでしょうね。若い人の聡明さを見てるとあまり悲観的にもなりませんが。
金持ち喧嘩せずとはよく言いますが、グッチ家の人々は基本的には理性を保つ訓練がされています。
ただ、それまで一貫して平静さをなんとかキープしていたマリツィオや、アルパチーノ演じる伯父が完全に理性を失ったシーンがありまして。それはGUCCIの株を売らなきゃいけないシーン。もう腕ふるわせてサインしてペン投げるわ、肉料理の皿ごと床に叩きつけるわ…。
株ってあんなに人を感情的にさせるのですか。ハリウッド製作だからというか投資文化のアメリカっぽい描かれ方。
以下、思ったことを羅列します。
- 舞台がイタリアなのに英語の違和感。ラストサムライはそこんとこ上手くやってたなぁ。
- ハウスオブグッチの3大テーマ「生まれ育った環境の違いの根深さ」「人は変わる」「幸せって何なんだろうね」
- 序盤にクラブで踊るシーンと、後半のランウェイを歩くシーン、めっちゃフラッシュたくんですけどあれって昔ポケモンのアニメで問題になったひきつけを起こしたりしないんだろうか
- デザイナーとして才能がない、凡庸だと言い渡すシーンが辛辣。自己肯定感と自惚れは紙一重。
- 「個人の魅力や奇抜さだけでは経営はできない」。まぁね…。
- イタリアって子供が生まれたら毛(?)を結んだ小物(?)作るの?風習?なにあれ?
- オペラのシーン、高音の音程が少しズレてたような。
- イタリア人も会釈する人いるんだ
- 予告編で流れてた「鹿の王」。もののけ姫も担当していた方が制作に関わっているそうですが、結構もののけ姫要素 強め。
- ラストで「今のGUCCIにグッチ家の人間は一人もいない」と。へぇー。
- フェンシングで使う判定機、あの時代からあったのか。
- 暗殺のシーンの銃がリアル。撃たれたタイミングで同じように「あ、痛っ」って言いそうになった。
- 「ブランドは品質」。確かに。
★4つ。涙を流すような感動は無かったです。もう一回見たいとも思いませんが、でもファッション界の大河みたいで面白かったです。時代は変われど動物としての人の本質はそうそう変わるものじゃないので、社会人の生き方として色々と参考になりました。あとレディーガガの眼力は天性のもの。蛇に睨まれたカエルの気持ちが分かりました。