縫製工賃の自動見積もりサービスFiTO(ふぃと)

太郎です。岡山でGジャン縫ってます。

タイトルにある縫製工賃自動見積もりサービスFiTO(ふぃと)。前にもお役立ちリンク集でチラっと紹介したのですが、地味に革命的なサービスと思うので改めて単独の記事で推しポイントを紹介したいです。お役立ちリンク集と内容重複する部分がありますがご容赦ください。

FiTOって何?

FiTOは縫製工賃を自動で見積してくれるサービスです。それ以外にも機能はあるようですが、目玉となるのはそれです。服を作る時、生地やボタンなどの材料は値段が分かりやすいのですが、縫製工賃はアイテムだったりパーツだったりと見積を計算するのが難しいです。工場側とすれば縫った後で実費を請求できればいいのですが、発注者は予算がありますからそうもいきません。

その見積りをネットで無料で出してくれるというのがこのFiTOです。活気的ですね。

推しポイント

実は縫製工賃を自動見積りしてくれるサービスはFiTO以外にもあります。ではなぜ私がFiTOを画期的と思うのか…。

推しポイント①「無料」

無料。これはでかい。特にサービス立ち上げの初期はユーザーの拡大が肝になります。無料だと試してみようかなと思いますし、人にも勧めやすいです。

これまでも縫製工賃を見積してくれるサービスがあったのですが、1アカウントあたり登録料が1万円、年間利用料で2~3万円かかったり、と。それは利益を出す上で仕方がないのですが、なにぶん私のように個人で縫ってたり内職として細々と縫ってる方にとってみたら決して試せる金額ではなく…。

とはいえFiTOの運営会社も利益を出さないとこのシステム自体が立ちいかなくなります。どうしてるのかと思ったら見積をした後にFiTO側で縫ってくれる工場を探してくれるようで。恐らくOEM的な事業としても利益を出しているのではないかと。ちょっと安心。

推しポイント②「自動」

無料の会員登録後、「いますぐ見積り」のページに進んで「ジャケット」「シャツ」などアイテムを選んで、ポケットは箱ポケット、など仕様をクリックしながら選択していきます。これが直感的で楽。

例えば箱ポケットを付けるなら追加で1061円(税別)と既に1円単位で値段が表示されるんです。これは楽だし、縫製工場側としたら「あぁそうか、箱ポケット1個で1061円プラスされるんだな」と相場の勉強にもなります。

昔、OEMで縫製を外注しようかと思った時、ネットで縫製業者さんを探してくれるサイトに依頼したことがあります。するとネットで仕様を入力後、後日オンライン会議で仕様について打ち合わせしました。結局値段が合わず発注することはなかったのですが、そのオンライン会議でも労働者が動いているわけなので少なからず罪悪感を覚えました。FiTOならコンピュータが具体的な金額を計算して提示してくれるので罪悪感ゼロ。しかも24時間365日その場で提示。

「この見積金額だったらポケットをなくそう」とかその場で検討できちゃうわけです。

推しポイント③「見やすい」

いますぐ見積り」で服の仕様を選ぶのですが、それが直感的で見やすい。アパレルって服はオシャレなんですけどITシステムは古いデザインだったりします。恐らくサイトのデザイナーさんが優秀なのでしょう、フォントもオシャレで見やすい。気持ちいい。これならアパレルと縁のないユーザーだったり大学生であっても難なく使えるはずです。

「服を作りたい人なら少々分かりにくくても頑張って使うよね」というある種の性善説に甘えてない感じがいいです。寝ながらTikTok見ちゃうようなものぐさ君でも使える上げ膳据え膳スタイルのサイトデザイン。運営側の使ってもらおうという気概が感じられます。

そしてハリネズミのキャラクターがちょこちょこ動いてるのもとっつきやすくて好き。

推しポイント④「1万行以上の縫製工程を分析」

気になる見積精度ですが、縫製工程1万行以上を解析して計算式に組み込んでいるそうです。このデータってどこから入手してるんでしょうね。FiTOを作った会社さんが群馬にあるので群馬界隈の工場のデータなのでしょうか。今後もデータは蓄積され続けて、きっと昨今の物価高も反映されていくものだと期待しております。

今後利用者と認知度が上がればより精度が上がるのだと思います。

FiTOが縫製業界を変えるかもしれないこと

長年業界の問題であった低い縫製工賃。それに伴う人材不足。これらをどうやって改善していくか…恐らく現場のものづくりをされてる方々は常に頭の片隅にあったことと思います。それがFiTOがちょっと変えてくれるかもしれない…。

変えてくれるかもしれない①「作業効率化」

縫製工場なら「これいくらで縫ってくれる?」と当然聞かれます。ざっくりの金額を出して、実際縫ってみたらめちゃくちゃ面倒だったというのはよくある話。ですから詳細に仕様を聞いて慎重に計算するわけですが、それも頭を使うし時間も使うわけです。見積が有料なんて工場聞いたことないですが、実際はその見積作業も含めての見積金額なわけです。

FiTOなら発注側がネットで見積金額を出せるので、そこでだいたいの相場感が分かります。ポケットの有無などの仕様もそこで調整してある程度固めることができます。整理された仕様で発注することができます。

縫製工場はFiTO上で適正価格が調べられるので単純に見積にかかる時間を減らせます。作業の効率化です。生まれた時間はものづくりに充てればいいので間接的に生産性アップします。

変えてくれるかもしれない②「縫い子さんも価格相場が見える」

縫製工賃は生地やボタンなどの資材と違って価格が表に見えにくいところがありました。ただ、工場に発注する側は複数の工場で見積を依頼するので、一応価格の比較ができるんです。工場側はどうかというと、他所の工場がいくらで受けているかなんてのは風の噂でしか知りえません。特に個人で縫ってる内職さんだったら基本家で縫ってるわけですから、よけい知りえません。自分の時間給や目標売上を設定してからどのくらい縫うのに日数がかかるか、で算出していたりします。

それがFiTOを使えば縫製工賃の相場が見えるんです。個人の縫い子さんであっても。

試しに昔受けた仕事の縫製工賃をFiTOで計算してみたら約2倍の差がありました。FiTOの金額の方が当時の工賃より2倍高かったんです。受けた当時は、依頼者さんから提示された金額を聞いて「まぁそんなもんかな」と引き受けたのですが。

ということでまだFiTOを使ったことのない縫い子さんは一度試しに使ってみてほしいです。無料なので。

変えてくれるかもしれない③「工賃の相場知ってもらえる」

これはさっきの話と被るのですが、縫い子さんだけでなく学生さんでも誰でも縫製工賃の相場が分かるんです。服飾の専門学生が在学中にアパレル業を始めようかなんて考えた時に役に立つでしょう。今は副業でアパレルを始める方がいると聞きます。服作りが未経験のインフルエンサーさんもアパレルを始めたりします。そういった方が縫製工賃の見積り金額を聞くと「そんな高いとは知らなかった」と驚きます。

一般消費者からするとファストファッションの価格が相場感として頭にあるので、どうしてもそのギャップは生まれます。

ただ、そうなると結局発注を諦めることになるので、見積を出した側は何の利益にもならないんです。無料で頭と時間割いて使って計算しただけです。

まずは発注者側にFiTOを使って工賃の見積を出してもらう。その金額を見て諦めるのであれば、縫製工場としては何の労働も発生していないので全く問題なしです。FiTOさん、絶対縫製業界のことを考えてシステム開発してくれたと思うともう感謝しかないです。

変えてくれるかもしれない④「服作りすぎ」

大量生産はべつにいいのですが、過剰生産となるとそれは宜しくないので適正の生産量に抑えましょうというのは業界全体としてもあったと思います。それがFiTOによって少し解決される…と期待。

過剰生産して廃棄してもその方が利益がでるからやっていたわけです。これがもし縫製工賃が適正価格になると、服の原価が上がるので当然 販売価格も上がります。そうすると服が売れにくくなりますから、生産量を減らそうという流れになります。そして原価が高い服なら売れ残りの廃棄も渋ります。

売り切れる分だけ作りましょう、という流れになります。多少機会損失が出てもいいから売り切れ状態にするようにしましょう、と。

消費者側は、せっかく買った高価な服なので大事に着ます。長く着ます。気軽に服を買い替えなくなります。買うのも慎重になります。

服作りをビジネスとするのであればそれって望ましい状態ではないように思えるかもしれませんが、必要な人に必要な物を必要な分だけ提供するのが本筋だと思うので、個人的には望ましい状態に移行してると考えます。

服作りの仕事が減ったら雇用はどうなる…となりますが、少なくとも今の現状としてはコロナ禍の影響もあり、国内の縫製工場は割と仕事でいっぱいです。これも個人的には望ましい状態だと思っています。今の縫製需要が高いうちに工賃の適正化や縫製士の人材流動が進んで労働環境の改善が進めばと。

服作りの現場は見積の指標として活用

長年服作りをされていた現場は、これまで見積計算していた計算式があると思うので、それは経験や蓄積されたノウハウとして今後も活用するのが良いと思います。ただ、FiTOのように誰でも簡単に使えるサービスが登場すると自然とユーザー数が増えることが予想されます。徐々にFiTOの金額が適正価格として相場に影響するのではないかとも思います。生地の伸縮性や厚みなどは「いますぐ見積り」上では選べないようだったので、実際に請ける金額になってくると若干価格が違ってくるかもしれませんが、指標にはなると思います。

特に縫製業として独立したての方や、これまで縫ったことがないアイテムや仕様の発注が来て、いくらで見積もればいいか分からない時に参考になります。

ということで今後のFiTOの発展と認知度の向上に注目です。

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